何の為に仕事をするのか
失業中という人以外はほとんどの人は今与えられた仕事があると思います。もし仕事が無いとそれはとてもつらいことです。まずは毎日仕事があるだけでも感謝しなくてはなりません。
しかし、ありがたい仕事があるからといって目的意識を持たずただ日々の仕事に忙殺されてひたすらその日の仕事を処理していくだけではあまり良くありません。確かに今目の前に与えられた仕事を一生懸命やるのは大事なことです。その上で、今よりもっと高い目的地をしっかり見定めてそこへ向かって一歩一歩積み重ねていかなければ数年後もずっと今と同じままになってしまいます。
私は日本のお客様の中国貿易のお手伝いをさせていただいているので、中国輸入や卸や小売をしている多くのお客様がどういうものを買っているかなど発注状況を目にさせていただくことがあります。その中でもただ売れる商品をひたすら回転させて利ざやを抜くという中国輸入初心者の方がときどきいらっしゃいます。完全にお小遣い稼ぎの副業と割り切っているならかまいませんが、ふとこれでいいのかなと思うこともあります。
扱う商品分野もめちゃくちゃで、時にはパーティーグッズ、雑貨、工具、。。。、と定まりが無く、ひたすらランキングとかでそのとき売れているものをリサーチして、まるでせどりロボットのように利ざやを抜くという感じです。こういう仕事のやり方を続けてその先にいったい何が残るのかと少し心配になります。
ただお金の為だけに仕事をする?
仕事をする目的がただお金のためだけという心だと、とにかく売れるものを回転させて利ざやを抜くという行動になると思います。
貧乏人から更にお金を取ろうとしてないか
このやり方は確かにすぐいくらかのお金を手にすることができます。しかしこれを10年間続けて、どうなるでしょうか。大事な人生を費やして利ざや抜きがうまくなるかもしれませんがそれだけではあまりにも寂しい感じがします。
自分の魂、情熱、信念のために仕事をする
いったい何のために自分はこの仕事をするのか、もっと言えば自分はこの世に生を与えられて自分の人生をどう生きるのかということを良く考える必要があります。目的地がしっかり決まれば行動もしっかりしてきます。
例えば自分は日本一すごいバッグを作りたいから何年もバッグ販売を磨いていく、こういうやり方なら毎日コツコツ積み重ねていくことができると思います。きっと10年間も続けたらすごい有名なバッグ会社になっているかもしれません。
何のために仕事をするのかは人によって違います。私も貿易をやっているのだからバッグ、服、アクセサリーなどを作ることに人生をかけるというふうに自分をむりやり設定しようとしたのですがどうもできませんでした。私は正直に言うとたぶんバッグ、服、アクセに興味がないのだと思います。バッグが本当に好きな人はバッグに夢中になれるし、服も同じです。でも私自身よく考えてみると私は違うようです。私の場合は貿易を通してこのホームページにたくさん書いているような、皆の意識を変えていくような情報を発信するのが好きなようだと感じています。文章を書いているときは自然に文章が出てきます。
木からお釈迦様を彫る一流の彫刻師は木からお釈迦様を作るのではなく、もともと木の中にお釈迦様が見える、それを傷つけないようにただ掘り出すだけといっていました。有名な漫画家やデザイナーもある苦しい状態を超えるとそこからは神様がおりてきたように自然にアイデアが出てくると言っていました。一流の人達は潜在意識(無意識)を使って仕事をしています。潜在意識のパワーは急に出てくるのではなく長年の経験の蓄積によりその分野の脳の神経細胞が圧倒的に発達しその結果として無意識レベルでもできるようになるということなのでしょう。せっかく仕事をするならこういう一流のプロになれるようにしたいものです。
仕事として何をするのかは人によって様々ですが、目指すところは自分の仕事で一流になることを目指して魂を磨いていくということのようです。
あなたが自然に夢中になれるような事、心の奥底から情熱がわいてくるような事なら一生それを続けていくこともできるはずです。もしただお金のためだったらモチベーションが弱いので続けることができないのです。
商品に魂を込める、ただ売る時代は終わり
何のために生きるのか、人生の目的
自分はいったい何のために仕事をし生きていくのか、良くわからないという人もいるかもしれません。それは魂に汚れがつき過ぎている、眼鏡が曇ってしまって前が見えなくなっているからです。
自分はいったい何のために生きるのか、曇りのない心で自分の本当の魂から沸き起こってくる声を聞いてください。
以下、Dさんと常平さんの対話です。
D「時々、自分は何のために生きているのだろうと考えて、本当にすべきことは何なのか、毎日ただ忙しく今の仕事に追われているだけでいいのだろうかと感じます。」
常平「そういう時もありますね。調子の良い時はやる気があるが、少し体調が悪かったり不調のときは悩んでしまって全然やる気がでなかったりフラフラと変なことをしてしまうというような感じですね。
例えば旅行をする場合、もし行き先がしっかり決まっていないとフラフラとしてしまうものです。余暇としてならフラフラと当ての無い旅行も楽しいかもしれませんが自分の人生しっかりしたいものです。
人生も旅行と同じで自分の人生はどこへ向かっていくのか明確な行き先が決まっていないと不安定になってしまいます。
反対にはっきりとした具体的なゴールが決まっていれば、そこへ向かって第一歩をどう歩めばいいかもはっきりとしていますから、今日1日すべき事が明確です。そうすると人生がフラフラとすることはなく、中心軸ができるのでとても安定します。
まずは自分は何のために生きるのか、あなたの人生はいったいどこへ向かっていくのかを考えてみたらどうですか。」
D「確かにそうですね。もちろん自分は何のために生きているのかを考えたこともあります。でも考え始めるとますますわからなくなってきます。そして悩みすぎるとどうにも動けなくなって無気力状態になってしまうこともあります。」
現代社会は雑音が多すぎる
常平「人生の目的がわからなくなってしまうのは現代社会は余計な情報が多すぎるからです。
そんな時は一旦考えるのをやめて、まずはwifiをオフにして情報を遮断し、食事を作る、掃除、洗濯をするなど何も考えずに身体や手を動かしてください。そうするとなぜか自然に元気になってきます。禅にも「禅即実行」という言葉があります。あれこれ悩むな、まず身体を動かしていれば自然に元気になってくるという意味です。
ネットなどのメディアではいろいろな情報が洪水のように入ってきます。一昔前はモバイルインターネットでどこにいても常にネットに接続できることが素晴らしいなどというようなことが言われていましたが、本来人間にとって常にネットに接続されてネットに使われる状態になってしまうのは不自然でとても苦しいということです。スマホでゲームやキュレーションアプリに夢中になっているのはもうスマホに使われて支配されているとも言え、このような状態が続くと自分でも気づかないうちにどんどん苦しくなっていくのです。
例えば誰々さんが会社を上場して保有資産が数千億円などというニュースを聞いて自分も上場してお金持ちになりたいと思ったり、スポーツ選手が活躍しているのを見て憧れたり、アラブの石油王の豪華な生活を見て羨んだりという具合です。
注意しなければならないのはこれらの過剰な情報によって自分の心の中に生じた目的や欲求は、本当の自分の目的ではなく妄想にすぎない可能性があるということです。多くの人が本当ではない妄想を自分の人生の目的であると思い込んでいるかもしれません。いろいろな情報が入ってくるので我々の顕在意識には大量のゴミが溜まっています。いわゆる心が曇っている状態です。
これでは本当のことは見えません。心きれいにして本当に自分が心の底、潜在意識レベルで人生のゴールとしたいことであるのかどうか、しっかり見極める必要があります。
そのゴールを思い描いたときに心の底から明るい力が湧き上がってくるようなら、それは本当に自分がしたいことです。でもそれを考えたときに心が暗く憂鬱になるようならそれはきっと妄想です。」
D「何のために生きているのか考え始めて、ときどき無気力になってしまうのはきっとそういうことなんですね。」
常平「そうです。まずは妄想や雑念を取り払って、ネットなどメディアや世間の情報に惑わされることなく、自分の心の奥底の声に耳を傾けてください。そうすれば心の奥底から湧き上がってくるものがあるはずです。
自分の本当の心の声を聞く
雑念を取り払って潜在意識の声が聞こえやすい状態にするには坐禅がとても有効です。雑念を無くし潜在意識の声に耳を傾け、それに従って生活するということが禅の修行と言われているものです。アップルのジョブズも坐禅をしていましたし、坐禅をしている経営者も多いです。
お金持ちになりたいという妄想
現代の社会は本当に雑念だらけです。いらない情報がたくさん入ってきて、入ってくるだけならまだしも企業広告等は人々の心を刺激するように巧みに仕掛けられているので煽られまくります。その結果多くの人が自分の本当の心が見えなくなってしまっています。」
D「なるほど。確かにそうですね。私は漠然とお金持ちになって、いい部屋に住んでいい車に乗っておいしい物を食べて、いい服を着て、世界中を旅行したりしたいという感じがあります。多くの人もこんな欲求がある人は多いと思います。」
常平「現代社会ではそのようなお金持ちになりたいと考えている人が多いと思いますが、それは本当に自分の心の奥底の声なのか、ただ商品を販売したい企業広告に煽られ踊らされているだけということはないでしょうか。きれいな大きな家に住み、いい車に乗って、ご馳走を食べ、いい服を着て、地中海でクルーザー遊びを毎日続けていたら半年もしないうちにきっと飽きます。半年もしないうちに飽きてしまうようなことは人生の目的にはなりえないのです。
今の社会は資本主義社会です。お金が中心の世界であり、皆がお金を追い求めるような仕組みが巧みに仕掛けられている社会です。そのため皆お金が欲しいと思うようになり、そして一応資本主義社会は機能しています。
ですがお金は人生のゴールたりうるものかどうかよく考えてみてください。
例えば日本の江戸時代、多くの人は剣術を磨いて立派な武士になりたいと考えていました。剣術が強い人が尊敬される時代でした。お金を稼ぐ商人は武士よりも下だったのです。お金持ちになることが価値があると思われているのは、人間の歴史全体で見るとほんの短期間にすぎません。
要するに時代や環境が変わればお金は価値がなくなる可能性があるということです。環境条件によって価値が変わるものは普遍的価値ではありません。」
本当の価値あるもの
D「お金は本当は価値がないということですか。」
常平「いえ、お金は今の社会システムではとても大事なものです。価値がないのではなく変化する可能性がありそれは普遍的な価値ではないということです。」
D「ではもし自分の人生の目的をお金とすると、自分の人生の目的は条件によってはもしかすると価値がなくなってしまうかもしれないということですね。それは人生のゴールとするには弱くて不安定すぎる感じがします。」
常平「そうです。人生の目的は条件によって変わることのない普遍的価値のあるものを設定しないと、結局また人生そのものが不安定になってしまうのです。日本の幕末時代に武士の時代は終わり剣術の価値は変わりました。それにより剣術を人生の目的としていた武士達は行き場を失ってしまったのです。
時代は必ず変わります。将来お金の時代は終わりお金の価値はいずれ必ず変わります。そのときに人生の目的をお金にしていると昔の武士のように行き場を失ってしまうことになるでしょう。
いつの時代でも全く揺らぐことのない確かな普遍的価値を人生のゴールとすれば、行き場を失く不安はなくなり人生はとても安定するということです。」
D「どんな時代、状況でも変わらない価値のあるものを人生の目的とすると、自分の人生がとてもしかりした素晴らしいもの思えそうです。でも変わらない価値のあるものってなんでしょうか。」
常平「それはよく自分でも考えてみてください。実は仏教や禅の世界ではこの答えはすでにでています。どんな時代でも決して変わらないもの、それはお金でも剣術でもなくもう1つ上のメタレベルのものである自分の心や魂です。
お金や剣術を認識できるのはそもそも心があるからです。自分の心があるということはいつの時代でもどのような条件でも、人間が存在する限り決して変わりません。決して変わらないということは心こそが普遍的な価値であり、この心を磨くことが人生のゴールとすべきものである、これが禅や仏教の答えです。」
D「心を磨くことを人生のゴールとすればどんな時代や状況でも変わることのないしっかりした人生の軸が得られるということですね。この根幹の部分の意識が変わってくると行動やビジネスのやり方も変わってくると思います。」
常平「心を磨くことを人生の目的にするからと言ってお寺に行って修行したり、出家する必要などはありません。生活禅という言葉があります。毎日の生活をしっかり生きる、仕事を一生懸命やる、それだけで心を磨いていくことはできるのです。」
D「私は物販の商売していますがお金が人生の目的であった時には、とにかく簡単に仕入れができる商品の回転率を上げてお金を回し利益を稼ぐことが最優先であり、商売の方法もそういうやり方でした。でも人生のゴールが心を磨くことであるとすると仕事に取り組む姿勢も変わってきそうです。」
魂を磨く修行
常平「そうです。人生の目的意識が変わってくると仕事への取り組み方が劇的に変わってきます。目的は心を磨くことであり、そのための手段として仕事がある。そしてその結果お金持ちになる場合もあるということです。いろいろな情報に惑わされてこの目的と手段と結果が本末転倒しないように気を付けなければなりません。
また何かとても困難な状況に遭遇したときもこれも心を磨くための修行なんだと思えばその困難を乗り越えるエネルギーが湧いてきます。
まずは今自分がやっている仕事に一生懸命取り組む、毎日の生活をしっかりする、そのように一つ一つ積み重ねていくことが心を磨くことに繋がる、そうして自分の魂の汚れを落としていくとこの世界をより正しく認識できるようになってきます。世界を正しく認識できるようになると自然に人生も成功へ向かっていくのです。
心の自立、さらに次のステージへ
傳田塾